アラジンのつぶやき

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スウェーデン出張報告3

スウェーデン出張報告3(最終)。
今日の出張報告については、私が職務で担当している幼保一体化対策・消費者政策・社会政策などを取り上げてご報告いたします。
ぜひ、スウェーデン社会の特質と合わせてお読みください。
なお、以前のご報告もそうですが、先方との関係もあり、残念ながら内容上オープンにできなかった点がいくつかあったことも申し上げておきます。

■少子化対策

・スウェーデンの「出生率の向上」という切実な問題意識
「出生率の向上」という問題意識は、前述のように、米国への大量移民等の歴史的体験により、国民の間で「切実な課題」としてとらえています。同様に、一定の人口がいなければ、充実した社会保障ができず、国際競争にも打ち勝っていけないとの深い認識があります。このことは寛容な移民受け入れ政策にも反映されています。
特に、政府要人の発言においても、しばしばスウェーデンを「小国」と表現しており、潜在的な「人口大国への希求」を感じさせます。

■幼保一体化

・スウェーデンでは、幼保一体化は、「歴史的事実」

スウェーデンにおいて、幼保が分かれていたのは、1930年代以前の歴史上の話との捉え方でした。
(私のほうから、幼保一体化の日本の現状を話すと)「今さら何を言っているのだ!」との共通の反応がありました(※なお、この点については1970年代に整理されたとの説もあります)。
なお、スウェーデンの歴史的経緯をみると、幼児保育・教育は、「保育所発展型」として分類されています。
また、お会いした皆さんから「すべて幼保一体化システムで動いており、全く問題ない!」と言われました。
なお、日本と事情が異なるのは、両親の職場と子ども施設が近接していることがあげられます。(車で10分程度の距離感が一般的です)

・スウェーデンでの歴史的経緯
ここで少し歴史的経緯をのべます。「1950年代までは、母親による保育の他に、小さな民間の保育や一時預かり・保育ママなどが一般的でした。その後、1960~70年代にかけて、女性の社会進出や都市への人口集中が顕著となるにつれて、コミューン(基礎自治体)による公的な保育が充実されていきました。また、内容的にも、当初の保育機能の中に新しく教育機能が追加・充実されていったのです。1990年代になると、指導要領が作成され、「プレ・スクール」という形で、保育・教育体制が強化されることとなりました。同時に、プレ・スクールとして民間企業の参入も認められるようになりました。(現在、プレ・スクールにおける公・民の割合は、約75%:25%)

・「両親側と施設側との合意」の重要性
障害の有無や宗教的要因を理由にプレ・スクール入所者を選定してはなりませんが、実際には、実質的な決定は、ほとんど「両親側と施設側との合意」でなされていきます。このため、施設側は、常に両親たちと緊密な連絡・連携を取っていくことが極めて重要です。特に、移民の多いスウェーデンでは、宗教などのデリケートな問題等では、両者間の意思疎通が緊密に図られます。(プレ・スクールでは、特定の宗教を慫慂することは禁止されていますが、食べ物などの宗教的慣行には、繊細な配慮が払われています)

・待機児童問題への対応
待機児童については、法律において「3か月以上待機させてはならない」と規定されており、その解決を巡って両親や関係コミューン間で迅速な調整が行われています。

・ワーク・ライフ・バランスの観点から
両親に対する480日に及ぶ出産・育児休業補償制度(最初の390日は、80%の給与補償)は、「夫婦共同作業としての育児」という意味で男性の育児観念を劇的に変えました。(特に、男親と女親それぞれに、育児休業期間の内、「最低でも60日が割り当てられており、相互に譲ることができない」という法的規定は、大きな効果があったのです)
さらに、出産・育児休業補償制度は、両親に対し、「個人の育児に対し、スウェーデン社会全体が多大なるサポートを行っているのだ」という実感を持たせる大きな契機となった点は見逃せません。

・保育士の待遇や社会的評価は、スウェーデン全職種の平均以上

保育士の社会的評価を待遇面で見てみると、その平均月間給与は(23000~24000クローナ)(=27.6~28.8万円)、全職種平均月間給与(22000~23000クローナ)(=26.4万円~27.6万円)よりも少し高いです。

■男女共同参画社会

・プレ・スクールにおける指導

プレ・スクール期において、「男女の性別役割を意識させない」という指導がなされています(具体的には、幼少期に、男らしさや女らしさを過度に意識させないような指導がなされています)。

・専業主婦に対する見方
高い教育を受けた女性を家庭の中に縛り付けておくのは、「人材資源の活用の観点から極めてもったいない」という発想です。(スウェーデンの大学への進学率は40%程度(うち6割が女性)。一方、日本の大学(学部)への進学率は50%程度(うち4割が女性)。)
女性は、社会の貴重な労働力であると同時に、女性の老後の年金確保のためにも労働経歴は必要である点は重要です。さらに、スウェーデン社会の個人主義や生活保障の観点からは、「生活をしっかり確保して、一人ひとりが個人の夢を叶えていくことこそが、『充実した人生』である」ので、子育てが「人生の夢実現」や「生活確保」に対して過重な負担となることは決して望ましくないと考えています。むしろ、社会全体で子育てを支援していくことが当然のことながら重要なのだという発想です。

・専業主婦の実態と背景
女性の大半が職持ちであり、専業主婦率は、たったの2%であるのは驚きです。
背景には、社会保障そのものが個人単位でシステム設計されていることです。高サラリーが、年金等における高社会保障をもたらす仕組みとなっているのです。
なお、専業主婦(前述のように2%)に対する特別の支援やメリットは一切ないそうです。
これにはスウェーデンの歴史的背景があります。まず、1960年代に、男女の賃金格差の原因となっていた「女性賃金別立て慣行」等が廃止されています。さらに、その頃から、都市化・地方過疎化・高齢化等の社会現象が顕著となり、新家族法が成立し、「子育ては、社会全体の負担」となったのです。同様に、男女は、結婚しても、「自立した個人」と位置づけられ、課税面(夫婦分離課税)、給付面(年金等)で、独身者と同じ扱いとなりました。この結果、女性の労働市場参加率は、38%(1965年)⇒ 80%(1982年)、男女間の賃金格差は、今日ではわすか5%に縮小しているのです。                    

■消費者対策(苦情処理システム)

・消費者苦情委員会(ARN)の組織

22名の裁判官(兼務)、サポート要員としての30名の職員(その内、20名は「裁判官の卵」としての法務官)、250名の理事(125名の業界選出者、125名の消費者団体代表者)で構成されています。
年間、なんと約1万件を迅速(基本的には、半年以内で)に処理しています!(日本では、国民生活センターが一昨年からADRを開始。年間、100件程度処理(基本的には、4カ月程度で))
処理方法は、迅速性を考えて、すべて書面審査のみというところがミソです。

・消費者苦情委員会(ARN)の実効的な権能
一件当たり、5~7名のメンバーで審査処理されます。
審査の決定は、あくまでも勧告であり法的拘束力はありませんが、実際には、理事の業界秩序を通じて実効性を担保しています。(企業の85%が従っていることが注目点です!)勧告に従わない企業に対しては、ARNが、ブラックリスト化して個別企業名を公表されます。場合によっては、業界の自主決定で、問題企業は除名されます。
挙証責任が企業側にあるため、消費者側の主張も通りやすいです。
書面審査を徹底していることが、迅速性を高めることにつながり、膨大な件数の処理を可能としています。

・日本への適用可能性
(私のほうから、この苦情処理システムを日本で適用するよう検討したいと言ったら)「協力する。必要な情報があったら連絡してほしい」と言ってくれました。
(さらに、私のほうから、日本の消費者情報のパイオネット機能を紹介したら)「自分たちも、そのようなネットワーク機能開発を研究していたところだ。ぜひ情報を送ってほしい」ということだったので、「喜んで協力したい。早速有益な情報を送ります」と答えました。良い協力関係が築けそうです。

■青少年対策

・不登校問題

不登校は多少あるが、移民の子のドロップアウトが主原因だそうです。スウェーデン社会への不適応が主な理由です。対策としては、不適応理由毎(スウェーデン語、英語、数学、コミュニケーション問題等)に、4~5のカテゴリーに整理して個別に対応策を実施しているそうです。

・「ひきこもり問題」はなし
私のほうから、「ひきこもり問題」を紹介したら、「(驚きとともに)日本のような「ひきこもり現象」はスウェーデンにはない。しかし、ゲーム・フリークは、青少年に顕著な現象としてあります」という答えでした・
なお、学業になじめない子供には、積極的に職場体験をさせているそうです。この職場体験により職場の面白さを体得する子供の数も多いようです。同様に、学校と職場の距離を更に近づけるべく、「職場研修」を推進している由。この分野では、「スイスの職場研修」事例が模範的だと言っていました。
学校への復帰は、無理をせず、本人が「学校で学びなおしたい」と思えるようになってから復帰してもらえばよいという考え方でした。
  

以上   
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